~SNS時代だからこそ、メディアトレーニングは重要~

トランプ政権がスタートして2か月余り。トランプ大統領のツイッターでの発信は留まるところを知りません。Fake newsと批判された主要メディアに対してのみならず、各産業に向けた発信も続いており、その度に、名指しされた業界は、どう対応すべきか、頭を悩ませています。

例えば、製薬業界に対しては高い薬価を批判する一方で、新薬承認の迅速化は進めると打ち出しました。航空業界にはインフラ整備や規制緩和、減税を約束しました。保険業界にはオバマケアの代替案への支持を要請しましたが、共和党内での支持が得られず、下院での採決直前に取り下げるという事態に至りました。

トランプ大統領のツイッターが発信される度に、関連する企業のトップは、メディアからコメントを求められ、どう対応すべきなのかが課題となっています。

エデルマンのワシントンDCオフィスでメディア戦略のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであり、前オバマ政権でナショナル・セキュリティ・カウンシルのスポークスパーソンを務めたケイトリン・ハイデンは、「トランプ時代のメディア・インタビュー」と題して、トランプ大統領の発信に対して企業はどう対応すべきか、についてアドバイスしています。(本文:Interviews in the age of Trump

  • 企業のトップのトランプ大統領のツイッターへの対応として、以下の4通りが考えられます。1)ポジティブなことを言う 2)(必要ならば)批判をする 3)ポジティブ・ネガティブの両方のことを言う 4)何もコメントしない
  • 1)から3)のいずれの対応するにもリスクが考えられます。4)「何もコメントしない」を選んだとしても、問題を回避している、リーダーらしくない、と逆に批判されることにもなりかねません。
  • 企業のトップにとって、トランプ大統領の発信が、自社の社員やビジネスモデル、顧客に関連することであれば、自らの考えを発信しなければならないのです。
  • だからこそ、賢明なCEOや企業幹部は、インタビュー、スピーチや公な場での発言で、自社のメッセージを効果的に発信するために、メディアトレーニングの重要性をよく理解しています。トランプ大統領の矢継ぎ早のツイッター発信に対して、その場対応でメディアの質問に答えるのではなく、メディアトレーニングで事前に準備したメッセージを的確に発信することが、これまでになく重要になっているのです。

社長や企業幹部が記者会見で如何に効果的に発信するかが、企業のレピュテーションにつながってくることは言うまでもありません。ですが、エデルマンの信頼度調査「トラストバロメーター」(2017年)によれば、日本のCEOのスポークスパーソンとしての信頼度は昨年から7ポイント下がって18%と下降し続けています。

またスポークスパーソンの話しぶりや発信の仕方も信頼度に影響を与えています。スポークスパーソンが、一方的に情報発信をするだけでなく、対話するスタイルが求められています。真実を伝えていると思うのは、「上手く書かれ、十分に準備をしたスピーチをする人」(41%)よりも、「メモや準備をせずに自然に話す人」(59%)であり、「外交的で丁重な人」(43%)よりも、「率直で思ったことを口にする人」(57%)のほうが上回っています。

エデルマンでは、企業幹部へのメディアトレーニングのサービスを日本語・英語で提供していますが、クライアント企業の広報担当者から、「うちの社長は、営業出身で、メディア対応は慣れている、と思っているんですよ。だから、メディアトレーニングは勧めにくいんですよ」と、相談されることがあります。

商談は何度も面会を重ねて契約を勝ち取ることができますが、メディアとの会見は一発勝負。やり直しは聞きません。またスピーチを十分に準備したからといって、それだけでは十分ではなく、CEOが企業のメッセージを自らの言葉として発信しなければ、人々の信頼を勝ち取ることはできないのです。

誰でもSNSという発信ツールを持ち、一瞬のうちに情報が世界を駆け巡る時代だからこそ、CEOや企業幹部が如何に効果的にメディアに対応するかが重要になっています。

エデルマン・ジャパン シニア・アカウント・スーパーバイザー 美坂薫