エデルマン・ジャパンでは、世界27カ国、33,000人以上を対象に実施した、政府、企業、メディア、NGOの各組織に対する「信頼度」の調査結果を解説する「2019エデルマン・トラストバロメーター」セミナーを開催しました。この調査は今回で19回目を迎えます。セミナーの冒頭では、エデルマン グローバル調査部門 エグゼクティブ・ディレクター トニア・リーズが登壇し、日本の調査結果を説明しました。本年の調査結果で最も顕著だったのは、調査対象である日本人の知識層の人々が自国に対して抱く信頼度と、一般層の人々が自国に対して抱く信頼度の差が調査史上最も大きくなったということです。知識層の自国に対する信頼度が大きく上昇したのに対して、一般層の自国に対する信頼度が低迷していることで差が大きくなりました。

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この傾向は米国を始めとする海外の先進国で2年前から見うけられた傾向ですが、日本でもこの傾向が見受けられるようになったのはどのような原因が考えられるのでしょうか。

セミナー後半で行われたパネルディスカッションの冒頭ではその原因について考察がありました。今回のパネルディスカッションには、パネリストとして、株式会社インフォバーン 代表取締役CEOの今田素子 氏、株式会社Deportare Partners 代表の為末大 氏、北海道大学 法学研究科 教授の吉田徹 氏が参加しましたが、それぞれが口にされていたのはあらゆるところで、情報の格差、内外コミュニティー間の格差、文化資本格差などがあるからではないかとのお話がありました。

例えば、今田氏のお話では、情報の分断が大きくなってきているからではないかとのご意見がありました。一つのコミュニティの中で接する情報が、他のコミュニティの中で接する情報とまったく違ったり、マスメディアよりもセグメントされたメディアに対する信頼が高まっていること。こうしたセグメントされたメディアに対してタッチポイントを持っている人と、持っていない人との間の情報格差が広がってきているからではないかと述べていました。為末氏からも、課金型によるメディアにお金を払える人と、払えない人との情報格差も大きくなっているのではとのコメントもありました。

情報の格差に関連する部分もあると思いますが、知識層は、国内だけでなく、海外の情報を含めてアクセスすることで、日本は他国と比べてまだましなのではないかと思っているからではないかとのご意見が為末氏からありました。また、日本国内で大きな問題として報じられたアメフトやボクシングの報道も、内部の人は案外と問題に感じていなかったように、一つのコミュニティの中では問題ではないと思われていたことが、社会の目から見ると許せない問題だと捉えられるような内外コミュニティー間の格差があちこちでおきているからではないかというご意見もありました。

吉田氏からは、先進国における最も深刻な格差は、所得とか資本の格差ではなくて、文化資本の格差から生じているとのお話がありました。文化資本とは、情報に対するリテラシーやリソースに対するアクセシビリティ、どういう環境で生まれて、親がどういう職業についているのかなどであり、この文化資本の格差が先進国を蝕んでいると述べていました。その例として、トランプとヒラリーに対する投票行動は、投票者の所得の格差によるものではなく、将来に対して楽観しているか悲観しているかで投票の判断が決まったことをご紹介していました。

また、今回のトラスト結果において、スポークスパーソンとして信頼できる人として、「自分のような人」や「一般社員」と回答した人の割合が前年比で最も大きく伸びました。

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これに関連して、今田氏の企業が運営しているBusiness Insider Japanやギズモードなどではターゲットを明確にして、同じ興味をもっている人に情報が届くようにしていることや、普通に生活をしている読者が何を知りたいかという同じ目線で情報を提供していることに対して、ミレニアル世代からの信頼が高まっていることを感じるとのお話がありました。

ミレニアル世代は、偽善とか透明性がないということに対して敏感であり、モノよりもコトを重視しているので、そうしたミレニアル世代と信頼を築いていくためには、自分たちが社会に対して何をしているのか、どういう意味があるのかなど包み隠さず、弱点を含めて伝えていくことが大事であるとのお話もありました。これまでのルールで縛りつけるやり方は通用しないため、あらゆる企業・組織が取り組んでいかなければいけない課題だと思いました。

エデルマン・ジャパン シニア・アカウント・マネージャー 中田清光