2021 エデルマン・トラストバロメーター 中間レポート(5月版):トラウマを抱えた世界

コロナ禍において、日本人の中央政府に対する信頼度が急落

~コロナ禍で変わった社会的課題に対する人々の意識と取り組みが求められる企業~

エデルマン・ジャパン株式会社(東京都港区、代表取締役:メイゲン・バーストウ) は本日、世界14カ国、約16,800 人を対象に実施した信頼度調査「2021 エデルマン・トラストバロメーター 中間レポート(5月版):トラウマを抱えた世界」(2021 Edelman Trust Barometer Spring Update: A World in Trauma)の日本の調査結果を発表しました。本調査は、政府や企業などの組織に対する信頼度を調べたもので、2021年4月30日から5月11日にかけて実施しています。

◆コロナ禍で日本人の政府に対する信頼度が低下-中央政府に対する信頼度は急落

本調査結果によると、日本人の自国の政府に対する信頼度は36%で、コロナ禍以前の2019年秋に実施した調査から7ポイント低下したことが明らかになりました。中央政府および地方自治体に対する信頼度をそれぞれ調べたところ、日本人の中央政府に対する信頼度は、コロナ禍で43%から31%と12ポイントも下落していることが分かりました。一方で、地方自治体は49%から47%と比較的高い信頼度を維持していますが、今回の調査で初めて低下しました。なお、中央政府に対する信頼度と、地方自治体に対する信頼度を比較すると、信頼度の差はコロナ禍以前の6ポイントから16ポイントへと大幅に広がっています。調査対象国全体を見ると、14カ国平均で中央政府への信頼度は52%、地方自治体への信頼度は56%と信頼度のギャップはわずか4ポイントであり、日本における信頼度のギャップは全調査対象国の中で最大となっています。

Trust Trauma 1

エデルマン・ジャパンでパブリック・アフェアーズ部門の責任者を務める廣野貴士は次のように述べています。「これまでの地方自治体のリーダーの発言や施策は、民意と実態を十分に考慮し反映したものであることが多かったように思いますが、コロナ禍という従来とは比較にならない不確実性の下で、首長はそれぞれリーダーシップを示すことを余儀なくされました。特に自治体のリーダーは、中央政府に比べ個人との距離感が近いだけに、先行き不透明な状況下で対応を誤り、地域住民をいたずらに不安にさせることより、状況が明らかになるまで行動を先延ばしがちで、それでも過去の危機には対応してくることができました。しかし、コロナ禍という未曽有の危機下においては、緊急性に基づく断固たる行動と、判断ミスは不可避である可能性を認める正直さをもって反復的に動かなければ、脅威への対応、危機管理で致命的な遅れを取ってしまいます。今回の自治体への信頼度の低下は、この『危機下におけるリーダーシップ』というテストに落第してしまったということかもしれません。」

また、日本において自国の政府のリーダーと地方自治体のリーダーに対する誠意と信頼性を調査したところ、新型コロナ感染症が拡大した1年前と比較して「大幅に低下した」と回答した人は、政府のリーダーが33%、地方自治体のリーダーが19%となりました。このことからも、特に中央政府のリーダーに対する信頼がこの1年間で大きく失墜していることが分かりました。

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◆ワクチンを接種しても、人々は通常の活動を再開することに不安を抱いている

オリンピックを目前にして、先進国の中でもワクチン接種が進んでいない日本では、回答者の81%が「コロナ禍の気分から抜け出せていない」と感じていることが分かりました。これは中国(35%)、アメリカ(56%)、イギリス(59%)、ドイツ(65%)、フランス(72%)といった国々と比較しても高く、14カ国平均の65%を大きく上回っています。

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また、調査対象国全体では、ワクチン接種を完了していても「公共交通機関を利用する」「民間航空機を利用する」のが安全だと思っている人は、14カ国平均でどちらも22%に過ぎず、「ホテルや旅館に泊まる」(29%)、「レストランの店内で食事をする」(35%)、「職場に行く」(37%)と、ワクチンを接種していない人と比較しても、平均で5ポイント増えたに過ぎませんでした。このことから、たとえワクチン接種を完了しても、通常の活動を再開することへの人々の不安は払拭されていないことが分かります。

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◆高まる社会的課題への問題意識と企業への期待

パンデミックによる社会不安が蔓延する中、人々の社会的課題に対する問題意識は高まっています。本調査結果によると、気候変動、インフォデミック、サプライチェーンといった問題に対して、14カ国平均で約3割の回答者がコロナ禍によって問題意識を持つようになったと答えています。同時に、企業が社会的課題に取り組むことへの期待も高まっており、「企業の関与なしには、自国の直面する問題を克服することはできない」と回答した人は、14カ国平均で60%(日本:53%)に上り、そのうちコロナ禍でそう思うようになったと回答したのは33%(日本:29%)でした。

コロナ禍により、企業が重要視すべきステークホルダーの優先順位にも変化が起きています。企業が長期的な成功を収める上で最も重要なステークホルダーは「従業員」であると回答した日本人は39%で最多となりました。2019年秋に実施した調査では、「顧客/クライアント」が最も重要とされていたことから、コロナ禍を経て従業員と顧客の重要度が逆転したことが分かります。これは、世界でも同じ傾向が見られます。

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「自分の勤務先」に対する信頼度は、14カ国平均で77%、日本でも59%と、政府、企業、メディア、NGO/NPOと比べて引き続き最も高く、情報源としても「自分の勤務先」が発信する情報は、政府やメディアが発信する情報よりも信頼されています。そして、最重要ステークホルダーとなった従業員の2人に1人(日本:51%、14カ国平均:79%)が、「自分の勤務先」が社会的課題に取り組むことを期待していることからも、コロナ禍により人々の社会的課題への問題意識が高まったことは明らかです。

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エデルマン・ジャパンの代表取締役社長、メイゲン・バーストウは次のように述べています。「オリンピックまであと1カ月を切りましたが、世の中には先行きの見えない不安が蔓延しています。厳しい状況下ではありますが、日本人回答者の65%が『現状は悲惨だが、このパンデミックを乗り越えることで、生活の仕方や働き方、人と人とのつながりを改善する上で有益なイノベーションや変化が生まれる』と答えており、コロナ禍がもたらす前向きな変化を期待しています。企業はこれを契機に自社の企業理念やパーパスに立ち返り、自社が得意とする専門分野から、まず従業員を第一に考えて、社会問題の解決に取り組んでいくべきだと考えます。」