世界中で不信が蔓延し、不信感が人々のデフォルトの感情に

民主主義、資本主義に対する信頼が崩壊

先進国では経済見通しを悲観視、特に日本は世界で最も悲観的

エデルマン・ジャパン株式会社(東京都港区、代表取締役:メイゲン・バーストウ)は本日、世界28カ国、約36,000人を対象に実施した信頼度調査「2022 エデルマン・トラストバロメーター」の日本の調査結果を発表しました。調査は、2021年11月1日から11月24日にかけて実施されました。

◆民主主義と資本主義に対する不信の高まり

本調査結果によると、日本における自国の組織や機関に対する信頼度は、前年度比で企業が2ポイント上昇(48%)、NGO/NPOが1ポイント上昇(41%)、政府とメディアがそれぞれ1ポイント低下(政府:36%、メディア:35%)と大きな変化はなかったものの、多くの民主主義国において信頼度が低下していることが明らかになりました。自国の政府、企業、メディア、NGO/NPOに対する信頼度の平均値である信頼度指標(トラスト・インデックス)では、日本は昨年同様調査対象国の中で2番目に低く、スコアは40と変化はありませんでした。しかし、ドイツ(-7ポイント、46)、オーストラリア(-6ポイント、53)、オランダ(-6ポイント、57)、韓国(-5ポイント、42)、米国(-5ポイント、43)において、5ポイント以上の低下が見られ、特に米国においては2017年から10ポイントも低下しました。一方で、民主主義国とは対照的に、中国では信頼度指標は11ポイントも上昇し(83)、アラブ首長国連邦では9ポイント(76)、タイでは5ポイント(66)上昇しています。

2022 trust release 1

なお、信頼度指標を所得別で比較した場合、上位25%の高所得者(62)と下位25%の低所得者(47)との間には、グローバル平均で15ポイントもの開きがあり、調査史上最大のギャップがあることが判明しました(日本11ポイント)。

これらの民主主義国は経済的見通しについても悲観的で、5年後の状況が良くなっていると回答した国民は、多くの先進国において5割を下回り、日本においてはわずか15%と調査対象国の中で最下位でした。中国では64%と高いものの、興味深いことに前年度比では8ポイント低下し、調査対象国の中で最も大きい下げ幅となっています。

2022 trust release 2

今回の調査結果では、民主主義と同様に資本主義に対しても、人々は不信感を持っていることが明らかになりました。「今日の資本主義の在り方は、世の中に善をなすよりも害を及ぼす」と回答した人がグローバル平均で52%(日本では29%)と過半数を超えました。また、グローバル平均で3人に1人(33%)、日本では約5人に1人(19%)が、「自由市場経済よりも中央管理された国営経済のほうが、人々を貧困から救うという点で良い働きをする」と思っていることが分かりました。

今では不信感が社会のデフォルト感情となっており、グローバル平均で回答者の59%が証拠を見るまでは何かを信頼しない傾向にあり、日本人回答者においては75%とグローバル平均を大きく上回りました。また、グローバル平均で64%、日本では58%が、「この国の人々は、意見が合わない問題について建設的な市民討論をする能力に欠けている」と思っており、民主主義にとって欠かせない議論する能力さえ失っていると人々が感じているのは、民主主義そのものに対する警告とも取れます。

◆政府とメディアが不信の連鎖を助長している

本調査結果で明らかになったのは、政府とメディアが不信の連鎖を助長していることです。政府のリーダーに対する信頼度はグローバル平均で42%(日本では28%)であり、ジャーナリストに対する信頼度はグローバル平均で46%(日本では23%)でした。政府のリーダーとジャーナリストは、グローバル平均でも日本においても、他の人々(科学者、自分の同僚、保健機関、一般市民、CEO)に比べ最も信頼されていない存在であることが明らかになりました。

また、ここ1年間で人々による「社会のリーダーに欺かれている」という確信は強まっています。「自国の政府のリーダーが意図的に人々を欺こうとしている」と思っている人は、グローバル平均で9ポイント上昇して66%に、日本では8ポイント上昇して43%となりました。また、同様にジャーナリストについては、グローバル平均で8ポイント上昇し67%に、日本では9ポイント上昇し52%を記録しています。

各組織や機関が「社会を分断する勢力である」か「統一する勢力である」かのどちらだと思うかを尋ねたところ、グローバル平均で約半数が政府とメディアは「社会を分断する勢力である」と考えていることが分かりました。日本においてはメディアが分断する勢力と見なされており(40%)、政府に関しては「分断」と「統一」が共に37%で拮抗しているという結果になりました。ただし政府が、社会が直面している問題を解決するためにリーダーシップを発揮し、結果を出せると思っている日本人回答者は約3割に過ぎず、多くの日本人が政府は社会的課題を解決できないと思っていることが明らかになりました。

◆高まる社会的不安と、企業が社会的課題を解決することへの高まる期待

不信がデフォルトとなり、社会問題の解決においても政府を信頼できない人々の間では、社会的不安が高まりを見せています。グローバル平均で回答者の85%(前年度比で+1ポイント)、日本では74%(+6ポイント)が失業に対する不安を抱いており、グローバル平均で75%(+3ポイント)、日本では72%(+6ポイント)が気候変動への不安を募らせています。また、フェイクニュースに対する懸念も過去最高レベルを記録し、「虚偽の情報やフェイクニュースが武器として利用される可能性を心配している」と答えた回答者は、グローバル平均で76%、日本では64%に上り、現在繰り広げられているロシアとウクライナの情報戦を示唆する結果が出ています。

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この不信と不安の時代において、最も信頼されている組織は企業であり、より身近な存在である「自分の勤務先」はグローバル平均で77%、日本でも60%と高い信頼度を維持し続けています。企業が社会的課題を解決することへの期待は高まっており、グローバルでは約6割、日本でも約5割の回答者が、その企業の社会問題に対するスタンスによって、そのブランドの製品を購入したり、その企業で働いたり、その企業に投資したりしていることが、この調査結果から明らかになっています。また、気候変動や経済的不平等といった様々な社会問題に対する企業の取り組み度合いについて尋ねたところ、「不十分である」という結果が示されましたが、人々が企業に対して社会問題にもっと取り組んでほしいと思っている、という期待感の表れであると言えます。

エデルマン・ジャパンの代表取締役社長、メイゲン・バーストウは次のように述べています。「ますます複雑化し、リスクに満ちたこの不安な社会において、企業はこれまで以上に社会的課題に取り組むことを期待されています。これは、企業にとって重大な責任であると同時に、自社のパーパスや価値観に沿って、従業員、顧客、投資家といった主要なステークホルダーのために行動する絶好の機会でもあります。また、不信の連鎖を断ち切るために組織ができることは、質の高い情報を提供することです。本調査結果によると、質の高い情報提供が、どの組織にとっても最も強力な信頼構築要因であり、社会経済的な信頼の格差をなくすことにつながることが明らかになりました。」